土砂災害から身を守る

スポンサーリンク
気象の基礎知識
この記事は約5分で読めます。
スポンサーリンク

 土砂災害は、斜面や急傾斜の崖が崩れるがけ崩れや、大雨等により山や河川敷などの土砂や倒木等が水と一緒に急激に流れ下る土石流など、人命にかかる大きな被害を出す災害です。

 土砂災害の特徴は、前兆がつかみにくく、災害が短時間で発生して、人命に影響を与える大きな被害を出すことです。

 土砂災害から身を守るためには、日常からの注意や心構えが必要です。

 土砂災害はどのようなところでおこりやすいか、土砂災害から身を守るために注意すべきポイントは何か、説明します。

土砂災害の種類と起こりやすい場所

土砂災害の種類

 土砂災害には、斜面の地表に近い部分が、雨水の浸透等でゆるみ、突然、崩れ落ちる「がけ崩れ」、斜面の一部あるいは全部が地下水の影響と重力によってゆっくりと斜面下方に移動する「地すべり」、山腹や川底の石、土砂が長雨や集中豪雨によって一気に下流へと押し流される「土石流」があります。

 内閣府のHPで、土砂災害の種類について模式図で示されています(下図)。

土砂災害の種類(国土交通省)
土砂災害の種類(国土交通省)

土砂災害の起こりやすい場所

土砂災害が発生しやすい場所として、代表的なものは次のとおりです。

山岳地帯

大雨などによって山崩れが発生します。沢や樹木の少ない山間部では土石流の危険が大きくなります。

急傾斜地

急傾斜地では崖崩れに注意が必要です。崖崩れは、豪雨等によって突然起こることが多いので、早めの避難に心がけましょう。

扇状地、川が谷から平野に出てくるところ

山間部の大雨によって山崩れが起こると、狭い谷が急に平地に出てくるところで、土石流となって直撃し、大きな被害となることがあります。

このような土砂が堆積してできた地形が扇状地で、今は安定していても、潜在的に土石流の危険がある地域であるといえます。

造成地

盛土地では、地質・地形が不安定なので、大雨が降ると地盤がゆるみ崩れる危険があります。住宅地で大規模な土砂災害が起こるときには、こうした盛土地の崩壊が引き金となることが多くあります。

土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域とは

 以上のように、土砂災害については、起こりやすい地形があるのですが、より詳しく土砂災害の危険性がわかるのは、土砂災害警戒区域土砂災害特別警戒区域(以下、「土砂災害警戒区域等」という)です。

 土砂災害警戒区域等とは、法律*に基づいて、都道府県があらかじめ土砂災害の危険性のある区域を指定しているものです。

  *土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)

 都道府県においては、様々な調査やこれまでの災害の状況を元に、こうした地域を指定し、防災への活用や被害防止対策を実施しています。

 土砂災害に備えるためには、まずは市町村のハザードマップを見て、自分の住居や農地が土砂災害警戒区域等に指定されているかどうか、確認しておくことが必要です。

 国土交通省のHPからも確認することができます。

土砂災害の危険を伝える情報

大雨警報(土砂災害)について

 別稿でもご説明しましたが、大雨警報には、大雨警報(浸水害)と大雨警報(土砂災害)の2種類があります。

 大雨警報(土砂災害)は、単位時間当たり雨量や降り始めからの総雨量ではなく、土砂災害の危険性に直結する土壌の水分量(土壌雨量指数)をもとに発表されるものだということを知っておいてください。

 大雨警報(土砂災害)は、警戒レベル3(高齢者等避難)に相当するものですので、特に土砂災害警戒区域などでは、弱者の避難を開始してください。

 なお、タンクモデルや発表基準など、詳しくは別稿(こちら)をご覧ください。

土砂災害警戒情報について

 土砂災害警戒情報は、大雨警報(土砂災害)の発表後、命に危険を及ぼす土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況となったときに、市町村長の避難指示の発令判断や住民の自主避難の判断を支援するよう、対象となる市町村を特定して警戒を呼びかける情報で、都道府県と気象庁が共同で発表しています(気象庁HPより)。

 具体的には、過去に発生した土砂災害の調査結果をもとに、「この基準を超えると、過去の重大な土砂災害の発生時に匹敵する極めて危険な状況となり、この段階では命に危険が及ぶような土砂災害がすでに発生していてもおかしくない」という基準を設定し、2時間先までに基準に到達すると予測されたとき、発表されるものです。

 土砂災害警戒情報は市町村単位で出されますが、気象庁HPなどで見ることができる「土砂キキクル」では、1kmメッシュで土砂災害の危険度を表示しており、自分の住む地域が紫色(レベル4相当)の表示になっていれば、速やかな避難が必要です。

 土砂災害警戒情報は、危険な場所からの避難が必要な警戒レベル4に相当し、相前後して自治体からの避難指示が発表されることもよくあります。

 土砂災害警戒情報は、「あと2時間で土砂災害が起こる危険がある」情報ととらえ、すぐに行動を起こすようにしましょう(きっと激しい雨が降っているか、間もなく降るはずです)。

 特に、土砂災害警戒区域では、速やかに避難してください。

まとめ

 土砂災害は生き埋めになったり、土石流に流されたりといった直接人命を奪う恐ろしい災害です。

 また、家屋や農地にも大きな被害を与え、復旧にも多大な時間と労力を必要とします。

 強雨から逃れることはできず、また、土砂災害警戒区域への対策工事もなかなか進まない中で、事前準備と迅速な情報収集で、少なくともご自分の命を守ることに徹していただくしかありません。

 この解説が少しでも皆さんの事前準備や災害対応に役立てば幸いです。

 大雨警報全般についてはこちらを、農業分野での大雨対策についてはこちらもご覧ください。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました