大雨警報には2種類ある

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気象の基礎知識
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 夏から秋にかけて、梅雨前線や台風によって災害が発生しそうな大雨が予想されると、大雨警報が発表されます。

 しかし、実は大雨警報には2種類あって、防災上の注意点も若干違います。

 この記事では、2つの大雨警報の違い、発表基準と、防災上の注意点について説明します。

大雨警報(土砂災害)と大雨警報(浸水害)

 大雨警報には、大雨警報(土砂災害)と大雨警報(浸水害)の2種類があります。

 このうち、大雨警報(土砂災害)とは、雨がたくさん降ることにより、がけ崩れや土石流などが起こる危険性が高いところに出されるものです。

 一方、大雨警報(浸水害)は、雨がたくさん降ることで、下水や排水路による排水が追いつかなくなり、浸水する危険性が高い時に出されます

 いずれも大雨が原因でおこる災害に対する注意喚起で出されるもので、両方が同時に発表されていることもよくあるのですが、厳密にいえば、別の基準で発表されているものです。

大雨警報の発表基準は雨量ではない

 以前は、大雨警報の発表基準に直接その地域に降った雨量の値が用いられていました。

 しかし、実際に土砂災害を起こした事例を見ると、大雨が降って一度やみ、しばらくしてまた降り出してから短い時間で災害が起こる事例が多くありました。

 それは、先に降った雨の水が斜面等に多量に含まれていたため、少しの雨でも土砂崩れの基準に達したからです。

 同じ理由で、浸水を起こした事例でも、土の中に水がたくさん含まれていたり、排水路の水位が高かったりしたため、少しの雨でも浸水となることがありました。

 そのため、現在では大雨警報の基準は、直接的な雨量ではなく、水が土の中にどれだけ含まれているか、また、水がどれだけ地表面に残っているかを示す「指数」が用いられています。

大雨警報(土砂災害)のタンクモデルとは

 では、こうした指数はどのように算出するのでしょうか。

 雨が地上に降ると、一部は地表から流れ、また一部はいったん土の中にしみ込んだ後、表層や地下水として流れていきます。

 これを穴の開いたタンクに水が蓄えられるモデルに当てはめ、どれだけの水量が溜まるかを計算で導きます

 これをタンクモデルといいます。

 タンクモデルを示した気象庁の概念図を下に乗せました。

大雨警報(土砂災害)のタンクモデルの模式図
土壌雨量指数のタンクモデル(気象庁HPから)

 10分ごとの雨がタンクに入り、各タンクからの10分ごとの流出量を数的モデルで計算して、タンクのトータルの貯水量(=指数)が決まります。

 この数字が、その時点での土壌に蓄えられた水の量に該当する指数で、これを土壌雨量指数と呼んでいます。

 土壌雨量指数は、全国一律のパラメータ(変数)を用いているため、植生や地質などは考慮されていません。

 植生や地質については、市町村ごとに警報を出す基準となる土壌雨量指数を定めることで、対応しているのです。

 例えば、過去何度か大きな土砂災害が発生している広島市安佐北区では115、近くの東広島市では153など、市町村ごとに過去の災害事例をもとに、細かく決めてあります

 また、平野部の市町村では、土砂災害の警報を出すことがないことから、基準となる土壌雨量指数を定めていないところもあります(大阪市など)。

 皆さんも地元の市町村の警報発表基準を一度見ておいてください(気象庁HPの各市町村の警報注意報発表基準から見ることができます)。

 気象庁の警報や注意報の発表基準を見るには、こちらから。

大雨警報(浸水害)のタンクモデルとは

 大雨警報(浸水害)の発表基準にも同じようなタンクモデルによる指数が用いられています。

 しかし、浸水害の場合は、地表の条件がコンクリートに覆われた都市部と、畑や産地の多い非都市部で条件がかなり違うので、工夫が必要です。

 気象庁では都市部では地中への浸透の少ないモデルを、非都市部では地中への浸透の多いモデルを用いています。

 そして、都市化率により、これらのモデルを組み合わせています。

 さらに、傾斜の急なところでは雨が流出しやすい(たまりにくい)ことを考慮して、地形補正係数をタンク流出量に乗じて計算しています。

 このようにして計算された指数を表面雨量指数と呼んでいます。

 同じ雨量であれば、一般に都市の方が農村よりも、平坦地のほうが丘陵地よりも数値が高くなります

 表面雨量指数の算定方法を示した気象庁の図を示します。

大雨警報(浸水害)のタンクモデルの模式図
表面雨量指数のタンクモデル(気象庁HPより)

 大雨警報(浸水害)の発表基準は、表面雨量指数で表されていますが、こちらも市町村ごとに細かく決まっており、下水道の整備水準なども考慮されたものとなっています。

 例えば平坦部でほぼ全域が都市の大阪市では15、丘陵地や農地が多い山麓部の大阪府羽曳野市では20となっています。

2種類の警報で対応は変わるか

 このように大雨警報には2種類あり、発表基準もそれぞれ異なります。

 では、警報が発表されたとき、私たちはどうすればいいでしょうか。

 まずは、自分の家、あるいは農地のある所をハザードマップで見てください。

 土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域に入っている場合は、まずは土砂災害への心構えをするべきで、大雨警報(土砂災害)の発表に十分ご注意ください。

 こういう地域は、早目に避難指示が出ることが多いですが、必要があれば、避難指示を待たずに非難することも必要と思われます。

 また、浸水想定区域に入っている地域では、当然ながら、大雨警報(浸水害)への注意が必要です。

 しかし、こうした地域では、上流の雨による河川のはんらんで被害が出ることも多いので、併せて洪水警報への注意も高めておいてください。

 たいていの場合は、大雨警報(土砂災害)と大雨警報(浸水害)は同時か、相前後して発表されます。

 しかし、どちらかしか出なかった場合、自分が関係するのはどちらか、事前に調べたうえで、的確な対応をとることが必要です。

まとめ

 2種類の大雨警報について、その特徴と発表基準、対処についてまとめてみました。

 行政は、その責務として高齢者等避難や避難指示を出しますが、適切なタイミングで必要な地域に絞って出すので至難の業です。

 特に災害弱者の方は、早目早目の情報収集を心がけ、早めに避難などの対応をとるよう、日ごろから心がけておきましょう

 大雨警報がどんなときに出されるかは、こちらもご覧ください。

 また、雨や風の強さを表す言葉については、こちらをご覧ください。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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